食人姫

その部屋の真ん中に、巫女の装束を着た麻里絵がこちらに背を向けて座っている。


「麻里絵、助けに来たぞ」


この部屋には他に誰もいない事を確認して、ゆっくりと麻里絵に近付く。


声を掛けたと同時に、ビクッと小さく身体を震わせて、振り返る麻里絵。


「大輔……君、光君も。どうしてここに」


「どうしてじゃないだろ。助けに来たんだ。麻里絵が死ぬ必要なんて何もない。俺達は化け物に食われない方法を見付けたんだ!」


俺のその言葉に、驚いたように目を丸くする。


信じられないのは無理もない。


だけど、夜の谷をこうして化け物に食われずにやって来たんだから嘘じゃない。


「まあ、話は後にして、麻里絵は逃げて。僕が麻里絵の身代わりになるから」


光は、最初からそのつもりで着替えを持って来たのだろう。


リュックから服を取り出すと、それを麻里絵に手渡して、装束を脱ぐように促した。


「着替えるから大輔は見ないで。いくら彼女だからって、女の子の着替えだからね」


「お、おう」


慌てて二人に背中を向け、俺は考えた。


麻里絵は逃げてくれるかな。


昨夜のように、何が何でも儀式をするって、拒否しないかなと。