食人姫

……だけど、化け物は俺から距離を置いた場所でピタリとその動きを止めた。


いける!


指が折れていようがいまいが、化け物を退ける力に影響はない!


「これなら……指の半分を麻里絵に渡せば良いんじゃないか」


もう半分は俺が持っていれば、化け物に襲われる事なく家に戻る事が出来る。


もしかすると、必要な数だけ分ければ、もう化け物に怯えなくて済むんじゃないか?


何にしても、この馬鹿げた儀式を止めさせないと、それを提案する事も出来ないだろう。


「よし、行くか」

一定距離を保ちながらも、化け物が俺を食おうと様子を伺っている。


安全と分かれば怖くはない。


死の気配は消えないけれど、何も今、初めて感じたわけじゃないから。


暗い谷の道を、俺はペンライトと木箱をポケットに入れて歩き出した。


神社に向かって、光の家の前を通り過ぎる。


由奈も光も誘うつもりはない。


鳥居をくぐるのでさえ、警護に斬り殺されそうなほど危険なのだから、神社で万が一誰かに見付かれば本当に命はないと思うから。


……そう考えると、勝浩は本当に谷の大人達に……賛成派に殺されたのではないかと思えてならない。