食人姫

力があるにしろ無いにしろ、怪物に遭遇してみないと分からない。


指を入れた木箱を握り、玄関から出た俺は、辺りを見回した。


この暗闇のどこかに化け物が潜んでいるかと思うと、気が気じゃないけど……とりあえずは確かめないと。


右手にペンライト、左手に木箱を持ち、道路に出た俺はそこで立ち止まった。


指が折れてさえいなければ、すぐにでも向かうつもりだったのに。


黒い服に黒いズボンで身を包んで。


少しでも見付かりにくいように。


それが最初から足止めになるなんて。


「来てみろよ、化け物」


正直怖い。


指が守ってくれた昨日の夜は、大丈夫だと分かったから安心出来たけど、今は違う。


「!来た!」


闇の中にある、不自然な黒い塊を俺の目が捉える。


道路を滑るように、こちらに向かってやって来た化け物。


今まで見た化け物の中で、最も速い動きで。


思わず後退りをしてしまった後、俺は祈るように木箱を前に突き出した。


急接近した黒い塊が、俺の前で人型へと変化する。


そして……伸ばした手が、俺に向かってさらに迫った。


もしかして、力が無くなったのか!?


眼前に立つ黒い人影に……俺は唾を飲み込んだ。