食人姫

山を下り、家に戻って少しだけ夕飯を食べた俺は、その時を待った。


部屋の窓から見える景色は、もう闇に染まっていて、民家の明かりと外灯くらいしか見えない。


この闇の中には怪物がうごめいているだろう。


儀式を済ませていない者が歩けば、運が悪ければ食われてしまう。


長時間外にいれば、時間の経過と共に食われる確率は高くなる。


だからこそ、神社の警護も気を抜くはずだ。


……そう信じたい。


「さて、行く前に指の確認をしておくか」


ずっと俺が持っていたから、中身がないって事はないけど、何度も衝撃が加わっているからな。


ポケットから木箱を取り出し、蓋を開けて布に包まれた指を取り出す。


ゆっくりと布を捲ってみると……一本の小枝のような指は、真ん中で二つに折れていたのだ。


これは……いつ折れたんだろう。


昨日の夜、化け物から逃げている時。


今日の朝、哲也の親父さんに殴られた時。


山で由奈を止めた時。


考えられる可能性はいくつかあるけど、これは……折れていても効果があるのか?


もしも化け物を退ける力が無くなっていたら、外に出る事自体が困難になる。