食人姫

「あー、い、一応ありがとうって言っておく。ありがとうね」


「あ、あんまり無茶するなよな」


なんでこんなに話しにくくなってるんだ。


今まで男友達みたいなノリで話せていたのに、このタイミングで恥ずかしがられると、俺もどうして良いか分からないだろ。


「ま、まあ登れる事は分かったし、さっき私がいた所くらいから傾斜は緩やかになってるからさ、もう帰っても良いんじゃない?」


だから、恥ずかしがるなよ……。


いつもはドシッと構えているのに、モジモジしてると嫌でも意識してしまうだろうが。


「ゆ、ゆ、由奈は帰っても良いぞ。ほ、ほら、服が汚れたし、俺だけで行ってみるからさ」


そして俺もテンパると。


なんだかこの狭い足場で、二人でいるのが恥ずかしくて、俺は次の足場へと向かった。


斜面を滑らないように、木の根っこに足を掛けてゆっくりと進む。


それを何度か繰り返し、一番近い木まで辿り着く事が出来た。


「だ、大輔君が帰らないなら、私も行くよ。後から付いていくから、先に行って」


結局帰らないのかよ。


別に良いけどさ。


前に由奈がいないのは良いけど、俺より速いやつが後ろにいるっていうのもなんだか嫌だな。