食人姫

急な斜面、子供の頃、俺達が最初の足掛かりに出来る木がある場所はここしかなかった。


だからここから山に登ったりして遊んでいたのを今思い出した。


木から木へと、斜面をジグザクに走って少しずつ登って行く。


辛いのは最初だけ。


上に行けば行くほど、傾斜は緩やかになり、身体への負担も減る。


……はずなのに。












「ちょ、由奈!速いって!なんでそんなに身軽に動けるんだよ!」


俺は、まだ三本目の木で、既に滑り落ちる恐怖を感じていた。


「はぁ……昔から変わらないよね、そういうとこ。そこに行くから待ってて」


そう言うと、いとも簡単に斜面を駆け下り、俺に近付いて来る。


まるで忍者か猿だな……と、斜めに生えた木に足を掛けて由奈を見ていた時だった。


「あっ!」


という小さな声を上げて、由奈が足を滑らせたのだ。


「う、うわっ!」


俺に向かって滑り落ちて来る由奈。


これはまずいだろ!


躊躇している暇はない。


ほぼ落下に近い速度で迫る由奈に、覆い被さるように倒れ込んでその勢いを殺したけれど……受け止めた衝撃が全身に走る。


でも、なんとか木の上に留まる事が出来た。