食人姫

夕飯を作っている母さんの横でカップラーメンを食べて、自分の部屋に戻った俺は、木箱を眺めて夢の事を考えていた。


あの光景が、万が一正夢だったとしても、この指さえ渡せば回避出来る。


化け物を近寄らせない事が出来るなら、明日までには。


谷は、もう朝の行列の事など忘れたかのように、いつもと同じ姿に戻っている。


麻里絵が巫女になって神社に入ったのに、誰も悲しいと思っていないのか。


自分が助かりさえすれば、誰が犠牲になっても構わないと思っているのか。


生まれ育った大好きな谷。


その思いが今、俺の中で崩れ落ちようとしている。


こんな苦しい想いをしてまで、この谷の人は今まで誰かを犠牲にして生きて来たのか。


そう考えると、谷の人間こそが化け物のように思える。


いっそ、ずっと昔に生け贄なんてやめていれば良かったのに。


麻里絵には出会えなかったかもしれないけど、こんなに苦しむ事はなかったんだと思って。


「……忍び込むしかないよな。正面からが無理なら、どこか別の場所から」


あの神社に入る為のルートは一つしかない。


他に行けるような道があったかな。


小さい頃、あの辺りで遊んでいて、正面からではなく別のルートで神社に出た気がするんだけど。