食人姫

そんな凄惨な夢を見て、目を覚ましたのは15時も回った頃。


飛び起きるように……ではなく、涙を流しながら静かに。


夢だと分かっているのに覚めないと、現実と区別がつかなくなる。


例えそれが、絶対にありえない事だとしても。


「ダメだ……助ける方法を考えなきゃ」


ゆっくりと身体を起こして、汗まみれの顔を手で拭う。


そう言えば、昨日の夜から何も食べてないから腹が減ったな。


気分は最悪で、食べたいとは思わないのに身体は正直で。


ギュルギュル鳴っている腹を押さえて、俺は台所に向かった。


父さんは警護で出ているから、家には母さんしかいない。


階段を下りて台所のドアを開けると、母さんが夕飯の支度をしていた。


「やっと起きたのね。心配して待ってたのに、帰ってきた途端寝るんだから」


怒るわけでもなく、本当に心配そうな顔を俺に向けて、母さんはそう呟いた。


「ごめん」


何もいいわけが出来ない。


ただ謝る事しか。


「生きてくれていたら、何をしても構わないけどね、神社には近付いちゃダメよ。儀式を邪魔すると、間違いなく殺されてしまうから」


俺を心配してそう言ってくれているのは分かる。


でも、俺はそれでも麻里絵を助けたかった。