「……を、血を……谷の為に捧げよ」
身体がふわふわする。
地に足が付いていないかのようで、これは夢だという事が分かる。
でもこれは……一体何なんだ。
ここがどこか分からないけど、赤黒い床の上に、麻里絵が座っている。
かがり火で照らされて、ぼんやりと赤く浮かび上がる……白装束の男。
それを俺は、天井から見ているようで、非現実的な雰囲気さえ感じる。
「さあ、化け物どもよ、神聖な巫女の血肉を喰らうが良い。そしてまた、33年の眠りに就け」
まるで俺に言っているかのように、男が天井を見上げて言った。
そして、その男が部屋から出て行ったと同時に、無数の化け物達が麻里絵に襲い掛かる。
黒く、冷たい死の雰囲気を放ちながら麻里絵にぶつかって……。
肉が削げ落ち、血が噴き出す。
悲鳴を上げ、よろめく麻里絵に容赦なく襲い掛かる化け物達。
「お、おいやめろ!麻里絵を食うな!」
叫んでも声など出ない。
俺は何も出来ずに、食われて行く麻里絵を見る事しか出来なかった。
腕が千切れる、腹を食われて内臓がズルリと体内からこぼれ落ちる。
だが、それらもまた、化け物に食われて、床に落ちる事はなかった。



