食人姫

「は、刃物は汚ねえぞ!」


「汚いもクソもあるか。儀式が無事に終わるまで、ここは誰も通さないからな」


この人達は……本気だ。


昨晩、反対派を撃った爺ちゃんの目と同じだ。


「哲也、一度戻ろう。これ以上いると、本当に殺される」


動きを止めた哲也をなんとか押し返して、鳥居から離れた俺達。


「何度来ても同じだからな!」


そんな警護の声を背中で聞いて、今来た道を戻る事になった。


「クソッ……なんだよ一体!刀まで持ち出しやがってよ!」


警護が刀を持っていなければ、強引にでも通るつもりだったのだろう。


それすら出来ない。


きっと、これまで我が物顔でこの谷を歩いていたのに、急に自分の思い通りにならなくなって困惑しているところもあるのだろう。


なかなかこんな哲也を見る機会なんてない。


「明るいうちは無理だね。夜になっても、化け物が現れる。仮にその指を麻里絵に渡す事が出来ても、今度はこっちが危なくなるから、完全に手詰まりだね」


今の状況を、冷静に分析する直人。


そう言われてしまうと、本当に何も打つ手がないように思えてしまう。


それでも、他に何も良い考えはなくて、哲也の家へと無言で歩いた。