食人姫

それが頬骨に当たり、ゴツッという鈍い音を立てて俺の顔に衝撃を走らせた。


不意の一撃に、その場に倒れ込む。


「何も知らねぇクソガキ共が、やれるならやってみやがれ。……だが、もしも麻里絵を助けられたなら、その時は認めてやる」


尻餅をついた俺を見下ろし、拳を震わせて親父さんがそう言い放った。


「おいコラ!何してやがんだよ親父!!」


俺達に気付いたのが、二階の窓から哲也の怒鳴り声。


「俺は本気でお前らを止めるからな。それが実香にしてやれるせめてもの償いだ」


そんな声も無視して、親父さんは俺に背を向けた。


顔を押さえて立ち上がった俺は、何も言わずに家の方に向かって歩く。


ドタドタと、階段を駆け下りて来る足音が聞こえる。


俺が家の中に入ろうとした時、哲也が飛び出したけど……俺は哲也の腕を掴んでそれを止めた。


「大輔!なんで止めんだよ!!」


「良いから!喧嘩するより、この後の事を考えるのが先だろ」


親父さんに怒りが湧かなかったわけじゃないけど、親父さんに怒りをぶつけるのは違う気がして。


俺達と親父さんは同じ境遇のはずなのに、儀式の前と後でこうも考え方が変わるのか。