食人姫

「おっちゃん、俺達みたいに、小谷実香を助けようとしたんでしょ?だけど、結局実香は儀式で命を落としてしまったんだ。助けられなかった苦しみをまだ感じてる。麻里絵を助けようとしてる俺達の気持ちは分かるよね?」


半分賭けだったけど、親父さんの表情を見てみれば分かる。


俺の予想は図星だったようで、戸惑いとも怒りとも取れるような表情で、ジッと俺を見ていた。


「わ、分かったような口をききやがって……実香が救ったこの谷を、俺は何があっても守るからな!」


そうなるのか。


確かに俺達にしてみれば、過去の巫女の事は分からない。


だけど、親父さんにとって、今の谷があるのは小谷実香のおかげで、ここで儀式を止めてしまえば小谷実香の死が無駄になる。


それだけはしてはならないと、自分に言い聞かせているのかな。


「……じゃあ、どんな儀式をするかは教えてくれないんだね」


「当たり前だ。終わったら……嫌でも知るだろうがな。巫女がどんな風に死んで行ったかをな」


「そんなの知りたくもない!谷の人間が全員反対しても、俺は麻里絵を見捨てない!」


そう俺が言った瞬間、眼前に親父さんの拳が迫った。