食人姫

「小谷実香の事なんだけど……」


俺がそう言うと、親父さんは辛そうな表情を浮かべた。


その手には例のノート。


何度も読み直したのだろう。


親父さんの手に付いている土なんかの汚れがノートに移っている。


「実香の何が聞きたいってんだ。あいつの事なら、光にでも聞けば分かるだろ」


「そうじゃない。小谷実香は……どんな儀式をして死んだのかを知りたいんだ。これは光では分からない事だからね」


「……儀式が終わるまでは、誰も教えてくれないだろうからな。それは俺だって同じ事だ。俺なら言うとでも思ったのか?」


もしもこれが哲也の爺ちゃんだったら、銃を向けられて「儀式が終わるまで待っとれ」とでも言われかねない。


だけど……親父さんが他の人達と決定的に違う所があったから。


「おっちゃんは、小谷実香を助けようとしたんじゃないの?助けられなかったから、泣いていたんじゃないの?」


泣いていた親父さんの姿は俺の姿。


この儀式で麻里絵を失ったら、きっと俺はこれから先、麻里絵を思い出すたび泣くかもしれないと思ったから。


運命に逆らおうとして、運命に押し切られてしまったんだと。