食人姫

どうして親父さんが泣いているのか……俺の父さんもそうだけど、40代後半の親父さんにとって、小谷実香は同年代くらいだったのだろう。


だったら、俺達がしようとしている事を理解してくれるはずだろうに。


「実香、お前は……約束通り守ってくれたんだな」


涙を拭い、パラパラとノートをめくり、例のページでまた涙する。


……儀式賛成派の大人達は、何が何でも、誰を犠牲にしてでも儀式を行おうという機械みたいだとも思えた。


それは爺ちゃんの印象が強いのだろうけど、親父さんを見ていると、そんな風には見えない。


「儀式って……絶対に巫女は死ぬの?死ななくてもどうにか助ける方法はないの?」


「そんなもん、ねえ。儀式をしなけりゃ化け物に食われる……はずなのによぉ、お前らは食われなかった。なんでだよ」


親父さんもかなり混乱しているみたいだな。


小谷実香の事を悔やんでいるように見えるから、指の事を教えてあげたいところだけど……これは、俺達に必要なものだ。


まだ言うわけにはいかない。


そんな事をしているうちに、遠くから、谷の入り口の方から、聞きなれない音と共に、神輿がこちらに向かってやって来た。