食人姫

神社へと続く道、田んぼに囲まれた中、俺の隣には哲也の親父さんが見張りで付いていた。


ここに来るまでに、光達の姿もあったけど、やはり大人が誰かしら付いていて、変な事をしないように見張られているのだろう。


「大輔、何も言ってなくて悪いな。でもな、これはこの谷の存続に関わる事なんだ。お前らが同級生を助けたいって気持ちは分からんでもねえが、谷を救う為だと思って分かってくれや」


「分かりたく……ないよ、そんなの」


哲也の親父さんは、豪快だけど気遣いが出来る人だ。


小さい頃から知ってるからこそ、俺は全ての気持ちを込めてその言葉を呟いた。


「おっちゃんは……33年前の時に何かしなかったの?小谷実香が巫女になった時、何かしようとしなかったのか?」


俺がそう尋ねると、親父さんは驚いた表情を見せた。


「大輔、お前……どうしてその名前を!」


俺がズボンに挟んでいたノート。


それを取り出して親父さんに見せると、今まで俺には見せた事のないような悲しげな表情に変わり、ポロポロと涙をこぼしたのだ。


「蔵で見付けた。小谷実香の幽霊にも会った。俺達が化け物に食われなかったのは……小谷実香に守ってもらってたからだよ」