食人姫

ああ、直人がバスの中で言ってたな、谷の女の子は、巫女になる為に高校にも行かせてもらえないって。


「でね、その儀式は33年に一度行われるみたいなんだよ。だから、巫女になるのはこの谷の歴史に残る凄いことなんだよ!」


……33年ってマジか。


前に行われたのは、俺達が生まれるずっと前の話じゃないか。


だから直人も哲也も、何も知らなかったわけだ。


「へえ、それは凄いね。他にも候補はいたのに、麻里絵が選ばれるなんてさ」


由奈の話に、少し興味を持ったのか、直人が目を輝かせて由奈と麻里絵の顔を見る。


「アホかお前は、12歳から18歳って、この谷に何人いると思ってんだよ。授業中に当てられるより確率が高いんだぜ?」


「そ、それはそうかもしれないけど、各地の伝統行事ってものがだね……」


わーわーと、直人と哲也が言い合っているけど、そうか。


伝統行事の大切な役割を担うわけだから、それは名誉な事かもしれないな。


「凄いな、麻里絵。お前なら絶対大丈夫だからさ、自信を持ってやれよ」


気の利いた言葉なんて掛けてやれない。


だけど、久し振りに会った彼女を祝福しようと、俺はその頭を撫でてそう言った。


麻里絵が……寂しそうな顔をしていた事に気付きもせずに。