食人姫

「あんまり期待はしねえけどよ……まあ、こいつらに食われねぇなら何だっていいぜ」


俺達を取り囲んでいる化け物達を見て身震いする哲也。


俺は牢の中の真ん中にその木箱を置き、格子の外へと化け物達を追い出した。


「……何なんだろうなこれ」


小谷実香の指……33年前の巫女の。


儀式を済ませた大人達と同じように、化け物を退ける力を持っている。


だけどそれは俺達にはない力で、この谷の人間が生まれつき何か特別な力を持っているわけではないという事は分かる。


「何だって、そりゃあ……指だろ?見たまんまだけどよ」


「いや、そうなんだけど……何か引っ掛かるんだよな」


「お前、今日はずっとそんなだな。将来探偵にでもなるつもりか?」


化け物が襲って来ないと分かって余裕が出来たのか、そんな冗談を飛ばす。


そんなんじゃないんだよ。


もっとこう……根本的に矛盾してる事があると言うか。


「なあ、哲也。どうして儀式賛成派はあんなに儀式を強行しようとしてるんだ?」


「はぁ?頭大丈夫か?んなもん賛成派だからに決まってんだろ?反対派が強行するもんかよ」


そういう事を聞いてるんじゃないんだけどな。