食人姫

「指……かよ。でもそんなもんで本当にこいつらが止まるのか?」


「分からないけど……どうだ?」


半信半疑。


そうだったら良いなという程度の思いで、その木箱をそっと前に出してみると……。


「オオオオオオオ……」


唸りながら化け物が、わずかに後退したのだ。


間違いない。


この指が……前回の巫女の指が、俺達を化け物から守ってくれたんだ。


「マ、マジか……」


何か考えているのか、悩んだ末に哲也が出した言葉はその一言。


俺も言いたい事はあるけど、言葉にならない。


死の恐怖から一転、生き延びる事が出来たのだから。


それも、殆ど偶然と言っても良いような幸運で。


「と、とにかくこれがあれば食われずに済むみたいだな。朝になったら出してやるって言ってたし……少なくとも、まだチャンスはあるはずだ」


「あのジジイがそんな約束守ると思うか?化け物に食われてるのを見て、笑ってるやつだぜ?」


自分の爺ちゃんなのに容赦ないな。


いや、自分の爺ちゃんだからか。


「多分……俺達が食われてるか見に来るんじゃないかな?」


ここに来る時には儀式の準備は終わってからだろうし、俺達が何を何をしようと手遅れだっていう時になったらだろうけど。