食人姫

もしかして、化け物は家の中に入って来られないんじゃないかと思っていた。


実際に哲也の家の中や、光の家の中には入って来なかったから。


だけど……小屋の中にいる。


そして、化け物は格子の隙間をすり抜けて、俺達に手を伸ばしてきたのだ。


一気に高まる緊張感。


背筋を撫でる……なんてレベルじゃなく凍えるような悪寒。


この手が触れれば、恐らく俺達を包み込んで、次の瞬間には食われているだろう。


「く、来るんじゃねぇ!」


震える声を必死にしぼり出して、哲也と俺は部屋の隅で壁に背中を押し付けていた。


近くに誰かがいるわけでも、誰かが助けに来てくれるわけでもない。


今度こそ、絶体絶命……。


麻里絵を助ける事も出来ずに、儀式が終わらないうちに……俺達はここで死んでしまうんだと、半分諦めてしまっていた。


でも……。

















「オオオオオオオ……」













と、唸り声を上げるだけで、約1メートル。


そこから俺たちの方には全く近付いて来なかったのだ。


一体だけじゃない。


誘われるようにして二体、三体、次々と小屋の中に入って来たけれど……その化け物達もまた、俺達に近付けないでいた。