食人姫

それがゆっくりと人型を成し、じわじわと俺達の方にやって来る。


「クソッ!マジかよ!おい!誰かいねえのかよ!!化け物が来てんだよ!!開けろ!」


迫る化け物を前に、哲也が焦る。


ガンガンと格子を蹴り、破壊しようとしているけど、それはさっきもやってビクともしない事は分かっているはずだ。


だからと言って……はいそうですかと死を受け入れられるほど、哲也も俺も諦めが良いわけじゃない。


「誰か!いないのかよ!」


儀式を済ませた事のある大人が一人でもいてくれたら、俺達は食われなくて済むのに!


懇願しても、怒鳴っても、助けなんてよこしてくれない。


これは……大人達の、自らの手を汚さない処刑法なのか。


子供であろうと大人であろうと、儀式の邪魔をするやつは許さない。


邪魔をするという事は、谷の人間全てを死の危険に晒すのだから。


黒い人影が俺達に迫る。


格子を揺すっていた俺と哲也は、それから逃げるように後退りして、小屋の壁に背を付けた。


「まさかよ……本気で見殺しにはしねぇよな?俺は孫なんだぜ?」


声が……震えている。


「谷の人間を撃ったんだぞ、そんなに甘くは……ないだろ」