食人姫

「おいおい、俺達は化け物に食われそうになりながらここに来たんだぜ?儀式で何をするかくらい教えてくれてもいいんじゃねぇの?」


少し怒ったような低い声で、麻里絵に対してでも容赦なく迫る。


「絶対に……ダメ。大輔君も哲ちゃんも、儀式が済むまで何もしないで。私も生きたいけど……皆が生きていてくれるなら、私はそれの方が良い」


だけど麻里絵も負けてはいない。


引っ込み思案で大人しい麻里絵が、哲也に堂々と反論しているのだ。


こんな麻里絵は見た事がない。


「くっ!麻里絵は……大輔と幸せになりたいとか思わねぇのかよ!このまま何年か経ったら結婚して、子供も出来てよ!そんな普通の未来をお前は捨てるのかよ!!」


「哲也!声が大きい!」


黙ってここに来ているのに、麻里絵の家族に知れたら大変な事になる。


特に……俺が谷に帰ってきた時に睨んでいた爺ちゃんに。


「私の未来は、皆が生きてる未来なの!皆の為に私は儀式をするんだから!……せっかく決心したのに、揺らいじゃうよ」


目にいっぱい涙を溜めて、今にもこぼれ落ちそう。


本心では死にたくないと思っているに違いないのに、谷の人達を助ける為に命を投げ出そうとしているんだ。