食人姫

でも、麻里絵は驚いたような表情を浮かべて、また首を横に振る。


「ダ、ダメだよ。私は儀式をしなきゃならないし、それに……私がやらなきゃ、谷の皆が……」


やっぱり、俺達が知らない事を、巫女になる麻里絵は知っているのだろう。


「麻里絵は……」


「え?」


「麻里絵は、生きたくないのか?俺は麻里絵に生きて欲しいから来たんだ。だから教えてくれ、儀式の内容を。どうして巫女が死ななきゃならないんだ」


儀式の内容さえ分かれば、俺達が求めている情報が全て揃う。


化け物の正体、過去に谷で起こった出来事、それを鎮める為に儀式がある。


一番の問題は、儀式の内容を聞いて、それでも解決策が見付からないという事態だけど……。


麻里絵は、そんな俺の気持ちを分かっていたのだろう。













「教えない。教えたら、大輔君も哲ちゃんも絶対危ない事するもん。皆には……私の分まで生きてほしいから」


考えた末に出した答えなのだろう。


ベッドの横にある机、照明が点いているそこに、便せんと鉛筆が置かれていて、誰かに宛てて何かを書いていたのだろうというのが分かった。


小谷実香……33年前の巫女と同じ事を、儀式の前の夜に、麻里絵もしていたのだ。