食人姫

「え?あ……とにかく入って。お父さんがまだ起きてると思うから、ここから入って来れる?」


まあ、塀と麻里絵の家の一階の屋根の距離が近いから何とか行けない事はない……かな?


麻里絵に言われた通り、なんとか窓から部屋の中に入った俺と哲也。


麻里絵の部屋に来るのは久し振りで、ちょっと嬉しかったけど、それ以上に化け物から……死から逃れられたという大きな安心に包まれた。


「それで、どうしてこんな時間に来たの?大輔君も哲ちゃんもドロドロだし」


田んぼのあぜ道を走ったり、地面を転がったりしたからな。


ここに来るのに死ぬ思いをした。


「ごめん、部屋が汚れるよな」


そう言った俺に、麻里絵は目を閉じて小さく首を横に振った。


「汚れても……別に良いよ」


少し悲しそうな表情を浮かべて、麻里絵がそう呟く。


昔からそうだ。


人を気遣うのに、自分の感情を隠すのは下手で、何を考えているかが良く分かる。


もう、この部屋を使う事がないから……そう続くのだろう。


「お前を助けに来たぜ。大好きな彼氏がよ。まあ俺はただの付き添いだ。気にすんな」


バシッと俺の肩を叩き、哲也が満面の笑みを麻里絵に向けた。