食人姫

「何にしても、巫女を明後日の夜まで守る事が俺達の役目だからな。これが上手く行かなきゃ、どの道この谷の人間は皆食われちまうんだ」


その言葉に、心から反対出来ない自分が悲しい。


儀式をすれば、麻里絵の命と反対派の何人かの犠牲で済む。


だけど、しなければ、谷の人間は食われてしまう。


それは、直人と源太が俺達に反対する理由となったもので、言い分は分かるけど。


だからと言って割り切れるほど、俺は大人じゃないし、何より麻里絵を失いたくない。


高校に進学して一年とちょっと。


ちっとも連絡を取らなかった俺を、昔と同じように出迎えてくれた麻里絵を見捨ててたまるか。


「親父達、本気みたいだな。邪魔するやつは殺すつもりだぜ」


「だ、だから僕は儀式をすべきだって言ったんだ。大人しく儀式をしていれば、誰も死ぬ事はないだろ」


俺を挟んで、直人が哲也に文句を言う。


今、そんな事を改めて言わなくても分かってる。


何か他に情報はないものかと、目を閉じて集会所の中の声に意識を集中させた時だった。















耳を付けた雨戸がガラリと開き、その隙間から銃と哲也の爺ちゃんが笑みを浮かべて顔を出したのだ。


「お前ら……なぁにしとるんじゃ」