食人姫

「放せ大輔!こいつは麻里絵を見捨てようって言ってんだぞ!ぶん殴ってやる!」


「哲也!殴っても麻里絵は助からないだろ!少しは落ち着けよ!」


夏美が来なかった時点で、もしかすると分裂してしまうんじゃないかと考えなかったわけじゃない。


ただ、必死に何かをしていれば、どうにかなるんじゃないかと思えて、ダメだった時の事を考えないようにしていたんだ。


「テメェの女だろうが!一番テメェが助けたいと思ってるはずだろうがよ!違うか!」


振りほどこうとした拳が、俺の頬に直撃する。


全力じゃなかったにしても、初めて食らう哲也の拳は、俺をフラつかせるには十分なものだった。


だけど……。










「俺は助けたいと思ってるよ」












踏み止まって、強い気持ちで俺は哲也にそう答えた。


「だったらよ!何か考えてんのかよ!このままじゃ麻里絵は!」


麻里絵を助けたいと思っているのは自分だけじゃないのか。


きっと、直人に言われて哲也はそう思ってしまったのだろうか。


「だから考えるんだろ。時間がないんだから、喧嘩をしてても仕方がない」


そう、考えるしかないのだ。


動くにしても、何の為に、何をしなければならないかが分からなければ動けないから。