食人姫

その言葉は決定的だった。


麻里絵を助けたいという、俺達の願いは間違いだと言っている。


一人の人を助けたいという気持ちは、多くの人を助ける為に押し殺さなきゃならないのか。


「ふざけんなコラァ!!」


大した反論も出来ずに、壁に叩き付けるように突き飛ばして、拳を震わせる哲也。


今にも殴り掛かりそうだけど、ギリギリの所で踏み止まっている感じだ。


「あ、あのさ……皆には悪いけど、お、俺も直人君に賛成……かな」


二人のやり取りを見ていた源太が、申し訳なさそうに手を挙げた。


哲也に殴られる事を覚悟して言ったのだろう。


大きな身体が震えているのが分かる。


「源太テメェもかよ!勝浩が殺されたんだぞ!それなのに黙ってようってのか!?」


予想通り、今度は源太に近付いて怒鳴り散らす。


「そ、それは……でも、どうすれば良いんだよ!どうやって麻里絵を助けて、儀式をしなくて済むように出来るんだよ!それを教えてくれよ!!」


「知るかよ!それを考えているんだろうがよ!!」


これはヤバい。


そう判断した俺は、素早く哲也に詰め寄って、源太を殴ろうと振り上げた腕を掴んで……それを止めた。