食人姫

それからしばらく、俺達は哲也が落ち着くのを待った。


いや、哲也が……と、言うよりは皆、自分が落ち着く時間が欲しかったのかもしれない。


外の悲鳴が聞こえなくなって、ようやく俺達にその環境が整ったような気がする。


「……とりあえず、お茶でも飲もうか」


おにぎりと一緒に源太が持って来たお茶をグラスに注ぎ、光がそれを皆配る。


この状況に混乱しながらも、精一杯皆を気遣って。


「悪い……」


本当なら、ありがとうと言うべきだろうけど、俺の口から出たのはそんな言葉。


何に対して言っているのかすらも分からなかった。


勝浩が食われた。


だけどそれは谷の大人達が仕組んだ事だったんじゃないか。


化け物なんていなくて、全ては儀式をする為に……なんて考えが浮かんだのも束の間。


人を食う化け物は本当に現れて、何人も食われてしまった。


じゃあ、本当に勝浩は化け物に食われたのか?


まだ明るいうちにも関わらず。


どこまでが嘘で、どこまでが本当の事なのか分からない。


谷に戻って来て二日目。


わけの分からない事が次から次へと起こって、俺はどうすれば良いのか、どうすべきなのかが全く見えなずにいた。