食人姫

「え?ああ……な、なんだこれ……」


「何しとる!逃げんか逃げんか!イーヒヒヒ!!」


同じだ……俺と由奈を襲った化け物と全く同じだ。


じゃあ、あれは反対派が作り上げた物じゃない。


「あれが……化け物……」


哲也が震えてる。


ここにいても感じる死の恐怖に震えているのだろう。


俺達が襲われても、他の人達が襲われてもおかしくなかったはずなのに、怪物はあの二人を襲った。


「な、なんだこれ……あ……」


そう……呟いたと思う。













次の瞬間、化け物は二人を飲み込むように包み込んで……バキッという音を立てたと同時に、地面を滑るように次の人の所に移動していったのだ。


「う、うわっ!!ぎゃああああっ!」


静かな谷に……断末魔の悲鳴がこだまする。


これが化け物……1000年前に山賊に殺された恨みが、今もなお俺達に牙を剥いているんだ。


儀式をすれば、少なくとも俺達は襲われなくて済むようになる。


だけど、麻里絵は死ぬ……。


強い気持ちで阻止しようと決めた俺の心を揺さぶるような悲鳴。


「わしは殺しておらんからな。ぜーんぶ化け物の仕業じゃい」


そう言って、爺ちゃんは集会所の中に戻って行った。