「ところでさ……」


でも、モヤモヤは全部消えてしまったわけではなくて。


気になってしょうがないことが、もう1つだけある。


「ん?なに?」


「そのチーズケーキ美味かった?」


そう、チーズケーキが美味しいかどうかが、気になってしょうがなかったのだ。


「うん。美味しかったよ。1切れも結構大きかったし。」


そこまで言われたら、やることは決まっている。


「ちょっと、買ってくる。」


ぐっ、と足に力を入れて席を立った。イスが床にこすれて、ガリガリと音が鳴る。


「ホント、好きだね。デザートとか、とにかく甘いものが。」


ふぅ、と小さく息を吐いて、あきれるような感じで斉藤さんは言ってくる。


女子じゃないんだから、と笑われたり、からかわれたりするけど、甘いものが好きな男は実は多い。


「あ、ちょっと待って。」


斉藤さんの言葉に足が止まる。「ほい」という言葉と一緒に500円玉が飛んできた。


さっき、おごってもらったから、そのお返しということだろうか。


「わたしの分もお願い。」

「まだ食うの!?」


甘いもの限定で、女の子の胃袋はきっと、宇宙だ。