「ねぇ、ケンイチは最近何やってるの?全然、大学で見かけなくなったんだけど。」


斉藤さんは、俺のことを下の名前で呼ぶ。会話の中に何度も斉藤が出てくると、めんどくさいからと言っていた。


「単位は取り終わって、卒論だけだし、バイト始めたんだよ。」


ずず、と味噌汁をすする。時間がたったせいか、かなりぬるくなっていた。


「どこで、どこで?」


斉藤さんが身を乗り出して聞いてくる。


「スーパーだよ。無くなったお菓子補充したり、在庫を整理したりとか、そんな感じ。」


「どう?上手くいってるの?」


食堂が静かになってきた。少しずつ人が減って、今はぽつぽつと見えるくらいになる。


「始めたばっかりだから、なんともなぁ。でも、ちょっと気になるというか……。」


「何?どうしたの?」


ランチも終わって、斉藤さんはデザートの時間。フォークで上品にチーズケーキを食べている。


「いや、それがさ……」


この時は、好きになるなんて思ってもいなかった、スーパーで出会った女の子の話をゆっくりと話し出した。