「そう。全然ダメ。てごたえは全くない。だから、もっと近くで、無理矢理手伝ってやろうって思った。」


「子どもみたいだね。」


「さすがに、次に拒否されたらあきらめるけどな。」


「……そういえばさ、私に話しかけた時も、そうだったよね。」


斉藤さんは、昔を思い出すような遠い目をしてから、笑った。




「私だけ、ゼミの中で、1人になっててさ。ちょっとタイミング逃しただけで、友達作るきっかけてなくなるんだぁって思った。」




「そしたら、ゼミ終わった後に、急にケンイチが話しかけてきてさ。私はわけわかんなくて、『うん』とか『へえ』とか言うだけだったけど……何か楽しかったな。」



「そ、そうか、楽しかったかぁ。」



少し、照れる。恥ずかしさを隠す為に、いちご大福を口いっぱいに入れた。



「手伝うと決めたんなら、頑張れ!ケンイチと日下さんとの恋を、私は応援してる!」



応援してくれるのは嬉しいけど、恋かどうかは違うと言おうとしたら、



「粉を飛ばすな!」




口の中に大福が入っていたのを忘れて、思いっきり粉を飛ばして、怒られた。




勝負は明日。どうかこんな風に、日下さんに怒られることがありませんように、と願う。