(…!!)

「……夢かぁ…。」

目が覚めた私はショウタの腕の中にいた。
ショウタはまだ気持ちよさそうに眠っている。

あんな夢を見たのは何年ぶりだろう。
あれは、私が幼かった日の記憶。
ある意味、私の原点ともいえるもの。

私が今こうして好きでもない男と一緒にベットにいる理由の一つもそこにある。


2ヶ月前、私は地獄を見た。
友達も恋人も楽しい学校生活も、全てを失った。私を陥れたのは、私が一番信じていた存在だった。

“絶望”
頭に浮かんだのはそんな言葉だった。


でも、失意の底で私は唯一の光を見つけた。それは“復讐”だった。何もかも奪ってやりたいと思った。アイツから。
私が味わった悪夢を、いや、それ以上のものを味わわせたかった。
アイツはいとも簡単に、地獄へと落ちていった。


ねぇ、今どんな気持ち?
悔しい?憎い?私を殺してやりたい?

地獄の居心地はどう?
苦しい?痛い?絶望的?

あなたの苦しむ顔が見られないのが残念なくらいね。


私は暗い部屋の中で薄ら笑いを浮かべた。
誰も見ていない部屋の中で。

ショウタがまだぐっすりと眠っているのを確認して、私はショウタのケータイに手を伸ばす。服はまだ着ていない。
そして、好きでもない男の体に寄り添い、写真を撮る。

これからこの写真が起こす出来事を思うと楽しさに胸がゾクゾクした。

イカレてる。

自分でもそう思う。
でも、今ではこのイカレた行為でさえ、私にとっては快感でしかない。

不幸の種を男のケータイにしこみ、私は足早に部屋を去った。目的が達成できれば、もう用はない。長居は時間の無駄だ。


夜の街を歩く私の顔は、たぶん笑いをこらえ切れてはいなかった。