「先生!」

「おお、来たかぁ。どうだ、高校生ってのは?」

「ん〜、やっと慣れた感じかなぁ。」

「おまえんとこは、結構、うちから行ったヤツも多いから、心強いだろ?」

「そうだけど…」

「大変だって、愚痴こぼしに来たヤツもいたぞ。」

「誰?深刻なの?」

「毎年、色々とあるんだよ。おまえは、誰かと、連絡は取り合ってるのか?」

「うん。亜希でしょ!みかでしょ!ああ、紺野。」

「アイツはどんなだ?」

「あれは、どこででも生きてイケるっしょ!」

「そうだな。ホラ、あそこに居る1年はなぁ」

「寺岡の弟?」

「ああ。水泳部なんだよ。自分でな、兄貴と違って、素質がナイですがって」

「そうなの?」

「いや〜!これもどうして、のびのびとしたフォームで、なかなかのモンなんだぁ。」

「へ〜。」

「兄貴を追って練習してきた、持ち前の負けん気で、うちに、メダルでも飾ってくれる様な気がしてんだけどなぁ」

「…」

「どうした?」

「それでも、あっちのクラブでは、難しいってことだよね?」

「そうなんだろうなぁ」

(駿は、ホントに凄いんだ…)


飄々として物静かで、それでいて芯がある駿祐。

そんな人物が、自分のことなど、
本気でなんか、相手するワケがないし、

メル友で居てくれていることにすら、恐縮する琴乃は、

この日、弟と会ったことの報告でさえ、
気後れしてしまっていた。