気になった慶太は、
歩み寄り、透かさず声をかけた。

「大丈夫?」


すると、なんだか彼女は、何かに怯えるように、慌ててその場を去って行く。


その様子は、以前に見ていた彼女とは別人で…

どうしても気になり、
慶太は自然と、彼女のことを追っていた。


改札を出たところでは、
スーツ姿の男とぶつかり、カバンを振り落としている彼女。


いてもたってもいられず
カバンを拾い上げる慶太の目に映った
顔色のすぐれない彼女は、

今度は、打って変わって強気な態度に変身した。


(こいつ、ヤバい!)


その強きな態度の中に見せる、どこか頼りない部分が、

慶太のハートを鷲掴みしたのだった。


(ど・ストライクかも!)


この様子では、
アドレスの交換どころか、名前を聞き出すのもムリと感じた慶太は、
とにかく今日は、自分を印象付けることに専念した。


自分には、菊地亮の彼女というツテがあることが、何よりも強味だった。


ところが、なにやら雲行きが怪しくなってきた。


彼女を呼ぶ男の声が!


(そうだった!こいつには男がいるんだった!)


そんな分かりきったことを、すっかり忘れるほど、
慶太は一瞬にして、彼女に気持ちを奪われていた自分に驚いた。