予想通り、言い出しっぺの菊地亮だけが、新しい恋の切符を手にしていた。


菊地が言うには、

「俺がレナちゃんとつきあうことで、あの学校との繋がりが出来ただろ!これから、文化祭だってあるし…」

「はいはい。ありがと。おまえが友達で俺は幸せ者だよ、ホント。」

「なんだよそれー。」

「なんだよ?」

「今、幸せ者はおまえじゃなくて…俺だから!」

「…」

「あれ?マジひがみ?」

「愚か者の間違いじゃね?」


そんなことに、あまり期待はせず、
月日が流れたある日の休日、

その日の海で、慶太が目にしたものは

紺野と亜希のツーショット場面だった。


「なに…そーゆーこと?」

「あっはっはぁ。こーゆこと。」

「そーですか。」


亜希の話だと、夏前には、元の彼とは、もうすでに、あまりウマくいっていなかったとか…

本人は、“就職が決まらず、いつもピリピリしている空気に耐えられなかった”と言うが、

慶太は、それが一番の理由ではないことを確信していた。


でも、それを言うと、
あの日のことを、口にしなくてはならないので、

慶太は、あえて亜希が話すことだけを、素直に聞いてあげていたのだった。


それにしても、慶太のまわりはカップル咲きで、
独り寂しく、北風に吹かれながら、
時折、気になるのは、
琴乃のことだった。