正直に言うと、

亜希から話を聞いた夜、
琴乃は駿祐に電話をかけていた。


それは、
何も知らなかった自分を
駿祐に、
“知らなかったんだ”と、知っててもらいたかったからに違いない。


だからなんだと言われれば、それまでなのだが。 


少し、アルコールもてつだって、
自分でも、それを伝えて、何がしたかったのか、分からずに、
気がついたら電話をかけていた。


伝えることで、駿祐の気が晴れたなら…なーんて、
そんなのは、自惚れが過ぎる。

しかも、時間は流れているのに、何をいまさら…


もちろん、これだけは言える。

駿祐に、未練があったワケではないってこと!

でも、

嫌われたくもないと思う、
そんな自分も、ここにいた…


そう、“誤解されたくない”ただ、それだけだったのだ。


駿祐は言った。

「ケイをやる気にさせるための、琴は切り札だったんだ。」


そして、こうも言っていた。

「事情を知ったからって、何?同情してくれてんの?だったら必要ないから!」


そこには、私の帰る場所など、もう、すでに無かったのだ。


こんなこと、正直に、慶太に言えるワケが無い。


きっと傷つけてしまうから。