慶太は、本当に口が上手い。

今の一言で、琴乃はすっかり気分が良くなっていた。

きっと、自分に気を使っている、琴乃の気持ちへの照れ隠しなのだろうが、

おかげで、そのあとの琴乃に、
二人の近い未来を想像させていた。


(そっかぁ!秋からは、今までより、ずっと会えるようになるのかぁ!な〜んか、想像つかないなぁ。どんな感じだろう?駿との時には、味わったことの無い時間だもんな…)


戸惑っているわけではないが、
ひとつ、気が付いたことがあった。


来年になったら、
やっと、二人とも大学生になるワケで…
そしたら、ほんの少し(?)だけど、胸の奥の方にあったツカエが解けると思うのだが、
琴乃は、就職活動が始まり、
慶太も、新しい生活が始まる。


そして、バタバタとしているうちに、あっという間に時が経ち、
翌年には、
社会人と大学生になってしまうんだと…。


いつまでたっても、縮むことのない二人の距離に落ち込む琴乃は、亜希に愚痴をこぼすのだった。


「なぁんか、飲まずにはいられないって感じじゃない?この状況!」

「って言っても、あたし、そんなにアルコール強いワケじゃないから!」

「…そっかぁ。」

「そう言うこと。」

「違うよ!“飲めない”のと“まだ飲めない”って問題も出てくるワケだ!」

「追い打ちですか?」

「わかりました?って言うか、…紺野の覚悟に関心だわ。頑張ってるなぁアイツ、ジェネレーションギャップ。あ、分かってないかぁ?」