「良くも悪くもな。」

「あたしってさ、光と影のどちらかって言ったら、“影”の方じゃない?」

「えー、そんなこと」

「“陰”ではナイにしても、“光”でもナイのは確かで、やっぱり地味な方なんじゃないかなぁって」

「んなことナイって!」

「!…うふっ!ありがと!」

「なんだよぉ琴乃ちゃん。最近、よく笑うようになったなぁって…それってやっぱ俺がそうさせてんだろうなぁって思って、なんか勝手に嬉しかったのになあ〜。」

「あ…(あたしって)これじゃあ(そんな風に思われてたんだ)どっちが年上なのか分からないね。」

「だって俺、男ですから!」

話がそれてしまった。


本当は、“がんばって!”と、
だたその一言が言いたかっただけなのに…


(あたしって、ホント表現が下手で、やんなっちゃうな。)


駿祐の大健闘にあやかり、
“次は慶太の番だよ!”と
軽いノリのつもりで話題を出したものの、

この兄弟間にある、昔からのわだかまりを知っていて
なおかつ、
今現在のいざこざに関わっている琴乃が、それを口にすることで、
二人を比較し、競わせているような…

そんな風には受け取られたくはなくて、
弁解をすればするほど、
余計に、まわりクドい言い方となり、
しまいには、愚痴っぽくなってしまったのだ。


ついでに、
慶太が、自分に気兼ねしていることまで知ることとなるなんて、

(こんなこと聞きたかったんじゃないのに。)と

人知れず、落ち込む琴乃だった。