桜の木も、だいぶ緑がかってきた頃

続々と、有力候補の新入部員が入り、
慶太も、とうとう3年になってしまった。


水泳部に所属していられる時間は、
泣いても笑っても、あと半年ほど。


でも、今の慶太は、すべてにおいて絶好調だった。


ニアミスとも言える、
あの、三人でのはち合わせだったが、

だからといって、なんの変化も起こらなかったことが
慶太の中の“わだかまり”を、吹き飛ばしたに違い。


あれから、駿祐の話題は出ないし、

琴乃も、あまり気にはしていなかった。


ベストタイムもグングンあがり、
三年として後輩からも慕われ、
今までにないピーク期を迎えて、ノリに乗っている慶太。


なぜか、こう言う時には、良いコトが重なるもので…


乗り換えのため、一度、駅のホームへと降りた慶太は、
焦る気持ちを、押さえるのも必死といった様子で、携帯を取出すと、
“菊地 亮”に電話をしていた。


「いたいた!いたよ!」

「なんだよ?何が?」

「ほら、俺の理想のカップルの片割れ!女の方!」

「ああ。なにをそんなに興奮してんだよ!」

「いや〜。マジで久しぶりだったからさあ!前は日課の様に、あの二人のこと見かけてたのに…アレ、一人で居たのに、あの子だって、よく分かったなぁ俺!スゴくね?」

「その子、可愛いの?」

「!なにおまえ!ダメだよ!!」