慶太にとって、
人生で、これほどにも屈辱的な日は、二度と無いだろうと言える…

いや、そうであってほしいと願う、
あの県大会の日、以来

琴乃とは、
連絡さえもとることは無かった。


正確に言えば、

あれから何度か、街で見かけたことがあったのだが、

失恋の傷の癒えぬ今は、
まだ、面と向かって会うことができず、

つい、今、来た道を引き返したりしていた。


(もしかしたら、自分が気付いていないだけで、
琴乃も同じことをしているかもしれない)と、想像しては、
そんな自分に苦笑していることがある。


(いつまでこんなこと続けなきゃなんないんだ?)


地元が同じだから、こればかりはしょうがないが、
そのたびに
兄への敗北感にさらされ、
やるせなさでいっぱいだった。


まだまだ、残る夏休みは、
水泳部に顔も出さず、
バイトとサーフィンに明け暮れる毎日。


スポーツ推薦で入学したわけではないが、
顧問の先生が心配をして、何度も電話をくれたようだ。

が、

兄と同じ、この高校を選んだ時の意気込みは、どこかへ行ってしまっていた。


「俺らしくやってくか!」

“頑張ったとこで、やはり兄には適わない。”と、
高校生活を半分残して、そう悟った慶太にとって、

あれは、生まれて初めての、愛の告白だったのだ。


「早く女つくるべ!」