屋外のプールには、専用の照明が無かったため、

陽が暮れれば、練習は強制的に終了となる。


水泳部が、今年初めて入水した、この日、

駿祐だけを残して、
部員は、プールからあがらされた。


更衣室に向かう途中、

琴乃は、足のミサンガが、外れていることに気が付いた。


慌ててプールに戻ってみると、

そこには、ひたすら泳ぎ続ける、駿祐の姿があった。


その、フォームとスピードに、魅了された琴乃は、
しばらくの間、そこに、立ち尽くしていた。


泳いでる最中、
そんな琴乃に気が付いた駿祐は、
ゆっくりと方向を変え、
琴乃の方へと向かって、泳ぎはじめた。


そして立ち上がり、犬のように水を切ると、

「何してんの?」

と尋ねた。


「え!あっ、」

「さっき、水かけられた文句?」

「ちがうよ。」

「ホント悪かった。」

「いいよ、そんなこと。」

「あのさ、おまえ、平泳ぎの息継ぎの時、一瞬止まってんの気が付いてる?」

「え?」

「多分、水を掻く手が…」

「…」

「今度、誰かに視てもらえよ…直した方がイイ。」

「あ、うん。ありがとう。」