龍臣はその勢いに驚きながらも、頷いた。

「言っておきますけど、ここは過去であっても別の世界。手出しは出来ませんよ。ただ見ているだけしかできません。それでもご覧になりますか?」
「はい!」

食いぎみに返事を返され、その勢いに若干押されつつも「わかりました」と承諾した。
すると、龍臣は奥に目線を向けた。それを加賀先生が辿る。

「あれは昔の加賀先生ですか?」

路地の奥から若い女性が歩いてきた。歳の頃は20代半ばだろうか。背の高いストレートの髪を後ろに一つに束ねている。着ているスーツがまだ初々しい。
女性が近くに来て、それが加賀先生の若い頃だとわかった。

「これは……。そうね私……。ここはあの日なのね。私の後悔している日なんだわ」