記憶堂書店



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井原が目を開けると、そこは薬品の匂いが漂う古い病院だった。小さな古い個人病院のようで、時間的に夜なのだろうか。辺りは薄暗い。シンッと静まり返っており、待合い室にも受け付けにも人は誰も居なかった。井原が立っているのは待合い室の診察室とかかれた扉の前だ。

「ここが貴方が来たかった過去ですか?」

穏やかな落ち着いた声に振り返ると龍臣が数歩離れた場所に立って井原に問いかけていた。
井原は青白い顔で神妙に頷く。

「5年前のちょうど今くらいの季節でした」

井原がボソッと呟くと、後ろの病院の扉が開いた。

「待ってください、理香子さん!」


聞こえた声に振り向くと、今よりも少し髪の短い西原理香子と今よりも少しふっくらとしている井原が入ってきた。