記憶堂書店



「申し訳ありませんがこちらの本はお売りできません」

記憶の本は外へ持ち出すことが出来ない。この店から出ると何故か消えてしまうのだ。
だから売ることが出来ないことになっている。

「そう……ですか」
「かわりに、あちらでお読みいただくことができます」

龍臣はカウンターの先にある、奥のソファーがある読書スペースを指差した。
お爺さんは持ち帰ることができず残念そうな表情をしたが、特に異を唱えるわけでもなく素直に奥へと向かった。

「ではしばしこのスペースをお借りしますよ」

そう告げると、お爺さんは大事そうに革表紙を撫でる。
そして、龍臣を一度振り返ってから、どこか覚悟したようにゆっくりと表紙を開いた。
そのタイミングで龍臣はパチンと指を鳴らすと――――……
スッとお爺さんは目を閉じた。

「いってらっしゃい。気が済むまで視てくるといい」