ほら、来た。

「ただいまー。龍臣君」
「おかえり、修也」

学生服で入ってきた修也は「ん?」と驚いた顔をした。そして軽く後ずさる。

「え? なんで俺、あずみさんに睨まれているの?」

カウンターの横にいるであろう、あずみの場所を見つめて修也は顔を引きつらせる。きっとあずみが修也を睨んでいるのだ。

「気にするな。ただの八つ当たりだ」
「あ、そう」

修也も何か察したのだろう。
あずみが修也に八つ当たりするときは大抵、龍臣といる時を邪魔されたと思っている時だとわかっていた。
タイミングが悪かったか、そう思ったがそれもいつものことであった。
修也はたいして気にする様子もなく、いつものように奥のソファーに身体を投げ出した。
そして身体を伸ばして「うぁ~」とおっさんのような声を出す。

「やけにお疲れだな、今日は」
「う~ん、三者面談だったんだ」
「へぇ、今日か。で? どうだった」

そういえば、先日散々進路に迷っていたなと思い出した。進路希望表と睨めっこをしていたが、提出をして三者面談が行われたのだろう。つまり、修也のお祖父さんが学校に来たのだ。

「祖父さんに何か言われたか?」
「大学へ行けと言われた」
「そうか」

まぁ、予想通りだな、と龍臣は思う。
修也のお祖父さんのことだ、きっと大学まで入れたがるだろうとは思っていた。蒸発した自分の息子(修也の父親)とは似つかないくらい、厳格で頑固な一面を持っている。

「で? どうすんの」
「夢がないのに行けないって言ったら、大学で夢を作れって言われた」