「大丈夫ですか?」
突然聞こえた声にあかりはハッとして顔を上げた。あたりを見渡すとそこは先ほど訪れた書店だった。
そして、声の方を見るとカウンターから店主と思われる男性が気づかわしげにこちらを見ていた。
「あれ?私……」
「寝てしまっていたようですね。気分でも悪いですか?」
龍臣の問いかけに顔が赤くなる。
そうか、どうやらここで眠ってしまったようだ。
しかし腕時計を見ると、訪れてからまだ10分程度しかたっておらず、ホッとした。
そして、眠ったからなのか妙に気持ちが軽くなっていた。
「いえ、むしろなんだかすっきりしています」
あかりの返事に龍臣はにっこりとほほ笑んだ。
「そうですか」
しかし、あかりは不思議そうに首を傾げた。その表情はどこか困惑しているかのようだ。
そして、恐る恐る龍臣に聞いた。
「あの……、私どうしてここで眠っていたんでしたっけ?」
何も覚えていない様子のあかりに龍臣は何事もないように返事をした。
「本を探していると言って来店されたんですよ。私が探している間に眠ってしまわれたようです」
「あ、そうでしたか! 恥ずかしい! すみませんでした」
あかりは真っ赤になって立ち上がった。
赤くなった理由は二つあった。眠ってしまった恥ずかしさと、何となく本を探しに来たところまでは覚えていたが、何の本かは思い出せないということだ。
でも思い出せなくても気分は良かった。
すると、ガラッと店の扉が開いた。
音の方を見ると学ランを着た中学生くらいのひとりの男の子が入ってきた。
「すみません。ここに姉が来ていませんか」
その声にあかりが驚く。
「大ちゃん!」



