記憶堂書店



「まぁ、とりあえず」と明日香はソファーから立ち上がった。

「曾祖父が探していたあずみさんの思い人の血縁者にも会えたし、今回はこの記憶堂に来てみたかっただけなのでもう帰ります」

明日香は身支度を整えて、店の入り口へ向かった。
龍臣もそれに続く。
すると、そこに修也が学校から帰って来て扉を開けた。

「ただいまー……、あずみさん!?」

そこにいた明日香を見て身体をびくつかせる。驚きで固まっているようだ。飛び出さんばかりに目を見開いて明日香を見る修也に龍臣は内心、あちゃーという気持ちでいた。
明日香は龍臣を振り返って、ニコッと笑みを見せる。

「今度は仕事でお伺いしますね」
「そうですね……」

龍臣も引きつった笑みを浮かべてそう答えるしかなかった。いや、そう答えざるを得ない迫力があった。
本当に、そんな所まであずみにそっくりだった。

商店街を抜けて帰って行く明日香の背中を見送りながら、修也は龍臣に青い顔を向けた。

「何、あの人……。生きてるよね? あずみさんが龍臣君を迎えに来たかと思った」
「……また来るってさ」

そう伝えて店の中へ戻る。
次は仕事で来ると話していた。好奇心丸出しで、記者の目をしている。普段ならそういった類は追い返していたのに、何も言えなかった。
むしろ。
龍臣は深くため息をついた。
どうしてだろう、なぜか次に明日香が訪ねてくるのが待ち遠しく感じてしまう自分がいた。

彼女はあずみではない。
でも、あずみがいなくなった途端に現れた。それには何か意味があるのだろうか。
龍臣は軽く口角を上げながら、掃除をするために箒を手にした。



END