記憶堂書店



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季節は冬になっていた。
外がとても寒く、店の中が温かいせいか店のガラス窓が少しだけ曇っている。

龍臣は年末に向け二階の掃除をしていた。あずみがいなくなって、なんの気配もない二階はどこか寂しい。

あれから、しばらくはあずみが迎えに来るのではと店に来るたびに二階を覗き、あずみの気配を探っていたが、あずみは待てど暮らせど迎えに来る様子はなかった。
三彦と会えたのだろうか、それともあの世でまだあきらめきれずに探しているのだろうか。

そう思って、フッと笑みがこぼれた。
あずみは諦めが悪いからな。
もしかしたら突然、龍臣を迎えに来るかも知れないとすら思う。

「龍臣、おはよう」

そう言っていつものように二階から入りてきそうな気がした。

「それはそれで悪くないかもな……」

そんなことを呟いてしまう自分こそ、諦めが悪いのかもしれない。

二階を片づけ、いくつかの蔵書を売り場へ持っていこうとした時、パサッと記憶の本が落ちる音がした。
記憶の世界へは相変わらず通じている。一時は幽霊であるあずみの力なのかと思っていた時もあったが、やはりこれはこの記憶堂の不思議な力なのだろう。

一階へ下りると、やはり床に一冊の記憶の本が落ちていた。それを取り上げ、カウンターへ持っていく。
近いうちに持ち主が現れるだろう。
大切な本だからと、そっとしまった。

すると、突然店の扉が開く音がした。
記憶の本の持ち主にしては来るのが異常に早いな。そう思って、入口に目を向ける。
逆光になって、顔は見えなかったが小柄な女性だ。

そのシルエットを見て、龍臣はドキンとした。
髪を一つに束ねており、赤い服を着ている。
その姿に見覚えがあった。

「あずみ……?」

無意識にそう呟くと、その女性は可愛らしく首を傾げた。