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龍臣が次に目を覚ますと、記憶堂の床に倒れていた。体を起こすと、酷い頭痛がするものの身体に怪我はない。
ふと時間を見ると、あれから一時間程度しか進んでいないようだった。
龍臣が安堵のため息をつき、辺りを見渡すとすぐそばに修也が倒れていた。
「修也、おい、修也」
「ううっ」
揺さぶって起こすと、修也も頭を押さえながら体を起こす。そして、辺りを見渡し、記憶堂だとわかるとあからさまにホッとしたような表情を見せた。しsて、目の前にいる龍臣を見あげ、目に涙をためた。
「なんだよ、驚かせやがって」
そう悪態をつく修也に微笑みながら頭をなでる。
「ありがとう、修也」
修也のお蔭で龍臣はこの世に残ることを決めた。
ひとりだったら間違いなく、あずみに着いて行っただろう。別に、命を粗末に考えていたわけではない。ただ、自分に縋るあずみが愛しく感じていた。そして、それと同じくらいにあの時はあずみが哀れに見え、自分が側にいなくてはという使命感に似たものまで感じていたのだ。
身代わりでもいい。あずみの側に居たいと思ったから、着いて行こうと思ったしあんな約束までした。
「あずみさん、本当に成仏してあの世へ行ったのかな?」
修也はどこか恐れる風な様子を見せながら周囲や二階の階段を覗き込んだ。
「行ったよ。わかるんだ、記憶堂にあずみの気配が微塵も感じられない」
龍臣は立ち上がって、大きく伸びをした。酷く疲れていた。
修也も同じように身体を伸ばしてから、龍臣をチラッと見た。
「ねぇ、あの約束……、本当にあずみさんが迎えに来たらどうするの?」
「もちろん、守るよ」
「えっ」
龍臣が頷くと、修也は目を丸くした。顔には焦りが見える。
それに龍臣は微笑んだ。
「約束は約束だから」
その約束をしたことを、龍臣は微塵も後悔していなかった。
むしろ、三彦に少し嫉妬した。
何十年たってもあずみの心を離さない、それくらいにあずみが夢中で愛した人。羨ましくて仕方なかった。
幽霊と人間じゃなかったら。
何度でもそう思う。
それくらい、あずみは龍臣にとって特別な存在だったのだ。



