記憶堂書店



一週間後――――。

あずみはお見合い相手だという大沼と結納を交わした。
綺麗な着物に、化粧をして見繕ってはいるがその姿は見ていて痛々しいほどに痩せて顔色も悪かった。目は虚ろで、破棄もない。
精神を病んでいるのは一目瞭然だった。

その日の夜。
あずみは赤い袴にリボンで髪を一つに縛って、屋敷の裏へ向かった。そして――――。
その小屋の中で自ら命を絶ったのだった。

「どうして……」

修也は農薬を飲んで絶命しているあずみに駆け寄って泣いていた。
あぁ、やはり。
龍臣はそう思った。
なんとなくこうなるだろうということは予想が出来ていた。あずみは記憶堂で、お婆さんの話を聞いてから全てを思い出していたんだ。
そして、再び悲しみに襲われていた。
それがこの場面だったんだ。だから龍臣達はここへ飛んできてしまったのだろう。

あずみは幸せになれなかった。
その事実が辛くて仕方がない。

「あずみ……。いるんだろう? あずみ……」

龍臣がボソッと呟いた。

「え? 何を言っているの、龍臣君」
「あずみ、いるんだろう。出て来いよ」

龍臣は声を張り上げて周りを見渡した。
すると、物陰から赤い袴姿で髪を下ろした女性が現れる。

「あずみさん……?」

修也は死んで倒れているあずみと、物陰から出て来たあずみを見比べていた。
物陰から出てきたあずみは、龍臣達がよく知る幽霊の方のあずみだ。

「あずみ、ここまでずっと近くで一緒に見ていたんだろう? 自分が死ぬまでをどうして俺たちに見せたんだ?」

そう尋ねると、あずみはやっと顔を上げた。
記憶堂で見た様な、気が触れた顔ではなくいつものあずみの顔だった。

「龍臣は気が付いていたのね。……どうしてだろう。ここは私の記憶の中だけど記憶の本から導き出されてきたわけじゃないから、後悔しているもう一つの選択肢なんて現れないのに。でももう全部思い出したのよ」

あずみは自分の亡骸を静かに見つめている。

「私が死んだあと、気が付いたら記憶堂に住み着いていた。そして龍臣に出会った。どうして龍臣にこんなに執着するんだろうと思っていたけど、三彦さんに瓜二つなのね。龍臣は三彦さんの血筋の人間なのかしら」

表情を変えることなく、ただ不思議そうに首を傾げる。